木村さんの母君がお亡くなりになり、病院からの依頼で自宅に搬送とのことでした。木村
さんの自宅に到着してみると、一階が作業場で三階が住まいになっていて、苦労の末、なん
とか三階に安置しました。
「三階から降ろす時は大変ですよ。葬儀はどこでされるおつもりですか」と私は聞きました。
「できれば、自宅の一階の作業場でやりたいのです」と木村さんは答えたました。
「葬儀社は決まっていますか?」
「近所の業者にでも頼もうと思っていますが、ちょっと見てもらえますでしょうか?」
案内されて、一階の作業場を見たら、鉄骨むき出しの壁、二階までの天井、コンクリートの
地面、そして、エアダクトが作業場の中央から突きだしていて、どれもこれも式場には不向
きな条件ばかりでした。これでは、祭壇が飾れません。
「どこの業者でも白木祭壇は飾れないでしょう。式場として設営する以上、どこに設置して
いいというものではないですから」と私は言いました。
「そうですか・・・・」木村さんは、あきらめきれない様子でした。
「どうしても、ここから送り出したいですか」と木村さんに尋ねました。
「何とかなりませんでしょうか?」
「お花で祭壇を作りましょうか。それなら、何とかなりますよ」と私は提案し、施工を受注
しました。
すぐさま、会葬者入出経路を確認、祭壇の位置を決めました。ただ祭壇設置場所の壁が平面
ではなく、左側半分の奥行きが足りたりなかったりしたけれども、頭のなかで、うまく空間
を演出するためのイメージを描き、限られたスペースの中での参列席や焼香位置、供花の設
置場所も決めました。また、むきだしの天井や壁を見せないように横断の高さ、天井幕の位
置取りをし、コンクリートの地面にはじゅうたんを敷くということなどを打ち合わせしまし
た。
次の日、おおむねイメージどおりに飾り付けが進み完成しました。出来上がった祭壇を見
て、木村さんから「想像以上によくできている」とお褒め頂きました。
「・・・今でも、よいお葬式が出来たと思っています。それじゃ、また、仏壇の件はお願
いします」と言う木村さんでした。調べてみると、八年前の葬儀施工でありました。
葬儀直後には、儀礼上、「ありがとう」という言葉は言ってもらえるかもしれませんが、
思い返して、よいお葬式ができました、と言ってもらえることは、本当にうれしいものです。
最近では、送り出す側の意識の変化にともない、ともすれば、葬儀はしないという人もい
ます。ただ、形はどうあれ、やり直しのきかないことだけに、自分の思う葬儀をしてもらい
たいと思っています。